器、陶器、蕎麦道具の 流山艸堂 石田陶器
流山艸堂 石田陶器

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掲載誌のご紹介

(株)柴田書店 発刊 「そばうどん」第十五号より

昭和60年、東京から移転を機会に日頃お世話になっている、お二人の先生に対談して頂きました。


プロフィール

■故 鈴木啓之
東京、平井のそば店、元「増音」のあるじであり、そばの技術、習俗の実践的研究家。正統的なそば打ち仕事の復活にかける情熱に、広範な信頼が寄せられている。

■高橋修一
建築家、住まい塾代表。昭和57年、12人の建築家と優れた職人を組織、ユーザーの參加も呼びかけて「住まい塾」運動をスタートさせた。



掲載内容
そば店のあるじ気鋭の建築家が、それぞれの立場から技術の継承と練磨の急務なことを語る。 そばづくり、家づくり。世界は違うがいずれも正統の仕事の復活を待望した対談の場は、高橋氏の手による石田陶器のショールーム(千葉・流山)。

今こそ、うまいそばを打つ仕事と情熱の復活が急務(鈴木)
恐しいのは、技術を忘れた手抜け工事の蔓延だ
(高橋)

●鈴木:
みごとなショールームになりましたね。簡潔で豪快、がっしりした骨組みと溢れるような木の香り。昔から日本人が培ってきた生活に根ざした美意識がここにはあります。設計された高橋さんは、住まい塾の代表とお聞きしましたが、住まい塾とは、どういう集まりなんですか。
●高橋:
今、家づくりは、ひどい状態になっています。住宅がマスプロの商品として扱われているわけです。住宅メーカーは、直接、建築にはタッチせず、企画してできあがった住宅を大がかりに広告して売るだけです。メーカーの注文で実際に現場の仕事をする職人も、住む人と顔を合わすことがないから、本当に気持ちのこもった仕事になりません。つくり手と住み手の心が通い合った、生きた住宅づくりができなくなっているのが現状です。一方、住み手のほうも住まいにファッション性を求めるようになって、住みやすさの問題に目が届かなくなっている。派手な雑誌の記事やテレビの広告に乗せられているんでしょうが、これでは困ります。共業といいますか、つくり手と住み手が、どうしたら住みやすい家づくりができるかを一緒に考える場がほしい、というので住まい塾をつくったわけです。
●鈴木:
以前のような、職人が注文主の事情を呑み込んで満足のいく仕事をしてやろう、という気持ちがなくなったら、技術は、不要というか、少なくとも向上しなくなるんじゃないですか。
●高橋:
優れた技術を学ぼうという意欲はなくなってきますね。今ならまだ、年輩の職人で鍛えられた方が残っていますので、そんな人を中心に仕事の場をつくって、若い人がしっかりした技術を身につける意欲と機会を持てるようにしたい。これも住まい塾の目的のひとつです。技術は、一度絶えてしまうと、それで終わりですから。
●鈴木:
そばの世界もまったく同様で。身につまされますね。今、そばがまずくなった、といわれていますが、やはり、うまいそばを打つ技術がおかしくなっているんです。そばの場合、戦後、木鉢を捨ててしまって、便利だというのでミキサーを取り入れた時からダメになりました。ミキサーは、そば粉をかき回すだけで練っていない。しかしそばの味は、木鉢を使い、手で練ることで出てくるものですよ。この技術は昔のそば職人なら誰でも当たり前にやっていました。ところが今は、合理化というのでしょうか、とにかく儲けることが先で、うまいそばづくりの技術も情熱も忘れられようとしています。
●高橋:
よく似ていますね。こわいのは技術を知っていながら手を抜く、といった状態を放置しておくと、ついにはもとの技術が完全に忘れられてしまうことです。手をぬいたやり方を本来の仕事だと思い込む。これは、手抜き工事ではなく、手抜け工事ですよ。
●鈴木:
手抜け、ですか。(笑)本当にこわいですね。確かに、若いそば職人には、ミキサーがないとそばが打てないと思い込んでいる人も少なくない。私は、蕎麦技術普及會をやっていますが。昔のそばの仕事をいま一度復活させ、きちんと若いそば職人に伝えたい、と思って始めたんです。なぜ普及會したかというと、もはや研究会などとノンビリ構えてはいられない、研究ではなく、具体的な行動としての普及、そうしなければ、正統的なそばの技術が失われてしまう、という危機感があったわけです。現在、会員は全国から交通費宿泊費自弁で集まっています。これを見ると、まだまだ、そばの技術の将来には希望がある、と頼もしい感じがしますね。
●高橋:
本物を受け継いで、将来に伝えるのは、そんな情熱を持った若い人の仕事ですからね。建築の世界でも、私自身、まだ若輩なんですが、若い力を集めていくことが重要な時になっている、といえます。最近は、十五年ぐらいで家を建て替える人が多い。これは飽きてしまうんです。マスプロの住宅では、やはり、長年住んでいくうちに愛着も増してくる、ということになりません。建築家として、すぐに飽きられるような家を建てたくない、という思いは強いですよ。
●鈴木:
このショールームに並んでいるそばの器にもいえることですが、地味でもしっかりした物なら、使いこなすほどに、その良さが表に出てくる。大向こう受けをねらった人気取りの器はすぐに飽きがきます。そばにしても、地味で誠実な仕事にこそ、長く発展する道があるはずです。手抜きも手抜けもない仕事をしたいですね。(笑)